ハートの音楽性とその変遷

2021年02月14日

今回は、ハートの音楽性の特徴とその変遷、を詳しく語って行きたいと思います。

①ハートの音楽性の特徴

ハートの音楽性は一言で言って、多種多様、ということです。
躍動感あるハードロック・ナンバー、美しくしんみりしたポップ・バラード、また、渋みのあるアコースティック・サウンドといった、多様な音楽性を持ち合わせいます。
このことは、レッド・ツェッペリンからの影響と、デビュー前のライブ・サーキットで客のリクエストに応じ、いろいろなタイウの曲を演奏していたことに起因します。
そのことはハートの魅力の1つでもあると思いますが、それがかえってつかみどころがないとして、ハートの音楽性への理解をさまたげている面があります。

②ハートの音楽性の変遷

次に、ハートの時代の流れを反映した音楽性の変化について述べてみたいと思います。
いわゆる70年代の初期ハートはレッド・ツェッペリンの影響が色濃く感じられるハードロックやアコースティックサウンドがメインですが、それだけにとらわれず、いわゆるヨーロッパ世界とアメリカ世界の融合という感じで、ハート独自の世界を作っていました。
リズムやギターリフはアメリカ的なゴツゴツした感じだが、その上でヨーロッパ的な繊細さ、叙情性、メルヘンチックさを醸し出しています。

このころのハートはオリジナリティがあり一番良いと言う人もかなりいます。80年代以降はオリジナリティがなくつまらないバンドになってしまったというのがその人たちの言い分です。
しかし、70年代とくらべアンのヴォーカルが前面に出ています。このころからのアンのヴォーカルはさらにパワフルになりました。

そして、85年「ハート」で復活を遂げた後は以前とかなり音楽性が変わっています。
外部の売れっ子ライターが作曲した曲を多く取り上げ、ポップでメロディアスとなり、ハードロック色が薄くなりまた。
また、それまではなるべくキーボードを使わない、シンプルなサウンドがメインであったが、シンセサイザーが大幅に導入されるようになりました。
プロデュースにも力をいれ、全体的にサウンドとして洗練されてきました。

それが、当時の売れ筋のサウンドとなっていて、実際よく売れたため、いわゆる「産業ロック」と批判されることもありました。
しかし、私は、バラードの曲が美しく、またサウンド面でも、より円熟し完成度が高くなってきたと思います。
ギターやシンセの隠し味としての使い方がうまくなり、またアンとナンシーのコーラス・ハーモニーも美しさを増しました。
また、デニー・カーマッシのドラムもタイトで力強いです。

90年代に入ると、ハートの原点復帰ということで、サウンドもよりシンプルになり、アコースティック色が強くなってきました。
また、活動休止後の2000年代に入りますと、同じシアトルのバンドとして、グランジの要素を取り入れています。
つまりヘヴィーなギターリフが多くなりました。
10年代にはいると、それがますます顕著になり、かなりハードでヘビーになってきています。

以上のように、時代の流れとともに音楽性も変化してきましたが、ハートが取り入れてきたものは、ハードロックやアコースティック・バラードのような
普遍的な音楽です。
ハートが好不調の波をくりかえしながらも40年以上生き残ってこれたのは、こういった普遍的な音楽を追求し、それを自分たちものとして吸収することによって、ハート独自の音楽作りだしたことです。
また、音楽性が変わっても、あくまでアンのヴォーカルを核としたメロディ志向の音楽を追求したことであります。